プロデューサー藤野良太の狙いとは？『スキャンダルイブ』企画の裏話を読み解く

2025年11月19日スタートのABEMAドラマ『スキャンダルイブ』。
主演の柴咲コウ×川口春奈の共演に注目が集まる中、作品全体のテーマ設計を手がけたのがプロデューサーの藤野良太氏です。
本記事では、藤野氏の企画意図・テーマ・制作戦略を整理し、作品に込められたメッセージを読み解きます。

この記事を読むとわかること

1. 藤野良太とは ― 実績とスタイル

藤野良太氏は、『グッド・ドクター』『刑事ゆがみ』『恋仲』など、社会性とエンタメ性を両立するドラマを数多く手掛けてきたプロデューサーです。
近年は配信オリジナル作品にも挑戦しており、『17.3 about a sex』や『30までにとうるさくて』など、現代社会を反映したテーマに定評があります。

『スキャンダルイブ』では、藤野氏がこれまで培った経験をもとに、“人間の信念と報道の倫理がぶつかる世界”を描く企画を主導。
彼が持つ現代的な視点と物語設計力が、本作の緊張感あるドラマ構造を支えています。

藤野氏が本作のテーマとして掲げたのは、「情報が氾濫する時代における真実の揺らぎ」です。
本人は制作発表の中で次のように語っています。

「世界を情報で満たせば、真実は誤情報に敗れる。だからこそ“誰が真実を決めるのか”という問いを物語にしたかった」

つまり本作は、芸能スキャンダルを題材にしながらも、情報社会における信頼と責任を描く作品。
視聴者は“報道される側・報じる側・受け取る側”という3つの立場から、物語の核心に迫ることになります。

藤野氏が芸能界を舞台に選んだのは、「華やかさの裏に潜む影」をリアルに描くため。
ドラマでは、芸能事務所・週刊誌・報道番組が三つ巴となり、“守る側”と“暴く側”の攻防が展開されます。

従来の芸能ドラマが恋愛や人間模様を中心にしてきたのに対し、本作では「真実をめぐる心理戦」が中心テーマ。
その背景には、藤野氏がこれまでのキャリアで貫いてきた「現代の価値観に切り込む企画づくり」という信念があります。

『スキャンダルイブ』の制作プロダクションはstoryboard、製作著作はABEMA。
この組み合わせは、藤野氏が意図した「スピード感」「緊張感」「社会性」の3要素を最大化するための構成です。

配信型ドラマの強みである“視聴データ分析”や“話数設計の自由度”を活かし、
短尺でも密度の高いストーリー展開を可能にしています。
視聴者が一気見したくなるテンポ感を重視している点も、藤野氏の戦略的アプローチです。

本作の特徴的な構成として挙げられるのが、記事掲載までの72時間というタイムリミット。
この設定について藤野氏は、

「時間のカウントが人間の焦りや嘘を暴く。72時間という制約が登場人物の本性をあぶり出す」と語っています。

時間という概念を物語の“第3の登場人物”として扱うことで、
視聴者に常に緊迫感を与える構造を意識的に作り出しています。

藤野良太氏の狙いは、「報道の正義」と「人間の信義」の間にある葛藤を描き出すこと。
視聴者は、どちらの立場にも正義があることに気づき、“真実とは何か”を自分自身に問い直すことになります。

単なるスキャンダルドラマではなく、「情報社会を生きる私たちへのメッセージ」として成立している点こそ、藤野氏の企画力の真骨頂です。

この記事のまとめ