「どうせまたありがちな刑事ドラマでしょ?」──そんな先入観を持っている人にこそ見てほしい作品があります。
福士蒼汰主演のフジテレビ火9ドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』は、“警視庁記者・報道記者の経験者が原案”という異色の出自を持つ、リアリティ重視の社会派ドラマ。事件を追う刑事の活躍ではなく、「事件をどう伝えるか」「情報が社会をどう動かすか」に焦点を当て、警察とメディアの“狭間”で揺れる現場の息づかいを真正面から描きます。
しかも本作は内容だけでなく“作り方”も挑戦的。公式サイトでは、フジテレビとして“初”となる3つの試みを明言しており、ドラマ制作そのものをアップデートしようとする意欲が伝わってきます。
この記事では、『東京P.D. 警視庁広報2係』の魅力を「社会派としての骨太さ」「広報課という舞台の新しさ」「制作上の3つの挑戦」という3つの視点から深掘りしていきます。
この記事を読むとわかること
- 『東京P.D. 警視庁広報2係』が“骨太でリアル”な社会派ドラマである理由
- 報道記者出身の原案者が描く、警察とメディアのリアルな攻防
- 福士蒼汰が見せる新境地と、広報課という異色の舞台の魅力
『東京P.D. 警視庁広報2係』とは?──ありがちな刑事ドラマとは一線を画す作品
本作の舞台は、警視庁の中でも一般にはあまり知られていない「広報課2係」。捜査の最前線ではなく、メディア対応と情報調整を担う部署が主人公です。事件の裏側を“伝える側”から描くことで、刑事ドラマの定番だった「追う・捕まえる・解決する」の快感とは別の、“言葉と判断”で緊張が積み重なる面白さが立ち上がります。
主人公・今泉麟太郎(福士蒼汰)は、捜査一課を夢見ながらも広報課に異動となる刑事。現場の刑事なら“追えばいい”局面でも、広報はそうはいきません。発表のタイミング、表現の選び方、どこまで公表するか──それ次第で、世論の受け止め方も、被害者や家族の心も、そして捜査の行方すら揺れてしまうからです。
派手なアクションよりも、情報の扱い方が人を救いも追い詰めもするという現代的なリアル。組織のメンツ、メディアの正義、個人の信念が交錯する現場で、登場人物は「正しいはずの行動」が誰かを傷つけることに直面します。まさに、静かに熱い社会派ドラマです。
このドラマが“挑戦作”と言われる理由──フジテレビ初となる3つの試み
公式イントロダクションで特に強調されているのが、フジテレビとして“初”となる3つの挑戦です。ここを押さえると、『東京P.D.』が「変化球の刑事ドラマ」ではなく、新しいドラマの作り方そのものに踏み込んだ企画であることが見えてきます。
① フジテレビ初「ライターズルーム方式」で“全話脚本”を制作
1つ目は、脚本制作に“ライターズルーム方式”を採用していること。これは主に海外作品で取り入れられている方法で、複数の脚本家が集まり、作品全体のストーリーや各話構成を共同で作り上げていくシステムです。
日本でも近年、NHK『3000万』(2024年10月クール)や、Prime Video『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(2023年)などで採用され、完成度の高さが話題になりました。本作では、フジテレビとして初めて、全話脚本をライターズルーム方式で制作すると明言されています。
この方式の強みは、作品の“背骨”が太くなること。単話ごとの面白さだけでなく、
- 作品全体のテーマがブレにくい
- 人物像や関係性が一貫して積み上がる
- 情報の伏線と回収が計画的に配置される
「広報」という繊細な仕事を描くうえで、雑に正義を振りかざすだけでは成立しません。警察の論理も、メディアの論理も、どちらも“正しさ”を持つ。だからこそ、複数視点で緻密に設計できるライターズルーム方式は、本作のテーマと相性がいいのです。
② フジ連ドラ初「広報課が舞台」──知られざる最前線を主役に
2つ目は、これまであまり描かれてこなかった「広報課」を舞台にした連続ドラマを、フジテレビで初めて制作するという点です。
広報を題材にした作品としては、2013年の日曜劇場『空飛ぶ広報室』(TBS系)や、2022年の単発ドラマ『木のストロー』(フジテレビ系)などが挙げられます。しかし、警視庁の広報課を舞台に、連続ドラマとして“組織の内外をつなぐ現場”を描くのは極めて珍しい挑戦です。
広報課は、警察組織にとっての「皮膚」のような存在。内側(捜査・幹部・現場)と、外側(報道機関・世論・SNS)をつなぎながら、情報の出し方ひとつで社会を動かしてしまう。だからこそ、そこには「間違えられない緊張」が常に張りついています。
事件が起きた瞬間、現場は混乱し、取材は殺到し、噂は拡散する。そのとき広報課が担うのは、単なる“案内係”ではありません。組織の信頼を守り、被害者に配慮し、捜査に不利益を出さず、同時に説明責任も果たす──まさに、現代社会における最難関の調整役です。
③ 地上波×FOD共同制作で「season2独占配信」まで含めた構想
3つ目は、FODとの共同制作で地上波×配信のコラボレーションに挑戦すること。season1を2026年1月クールで地上波放送した後、season1終了後からFODでseason2を独占配信することが決定しています。
これは「地上波で完結して、配信でおまけ」という構造ではなく、最初から“2シーズンで一つの大きな物語”として設計されているのがポイント。地上波の枠に収まる面白さを担保しつつ、配信でさらに踏み込んだテーマや背景を描けるのは、社会派ドラマにとって大きな武器になります。
視聴者側にとっても、season1で世界観に入り、season2でより深く“広報とメディアと警察”の渦の中へ潜っていく──そんな体験が期待できます。
報道記者出身の原案者が描く、現場のリアリティ
本作の“リアルさ”を語るうえで欠かせないのが、原案者が警視庁記者・報道記者の経験者であるという点です。作品の設計そのものに「現場を知る人の視点」が組み込まれているからこそ、単なる“正義の物語”に寄らず、現場の矛盾をそのまま緊張として成立させられます。
ニュースでは、結果だけが流れます。逮捕された、送検された、会見があった──しかし、その裏で何を、どの順番で、どこまで言うかを巡り、警察とメディアの間には細かな駆け引きが存在します。本作が面白いのは、その“ニュースにならない部分”をドラマの緊張として描けるところ。
たとえば「発表の一言」が、捜査に影響したり、世論の方向を決めたり、被害者の尊厳を左右したりする。ここにあるのは、単純な善悪ではなく、正しさ同士が衝突する現代のリアルです。
会議ややり取りの場面も、過剰にドラマチックに盛らず、“空気”で圧を出すタイプ。だからこそ、視聴者は「本当にこういう判断が現場で起きていそう」と感じる。派手さよりも、息づかいがリアリティになる社会派作品です。
警察組織のリアルを描く“広報課”という最前線
広報課は、警察組織の内側と外側をつなぐ部署です。内側には捜査の論理があります。「言えること」と「言えないこと」がある。外側には報道の論理があります。「知る権利」があり、「伝える責任」がある。その真ん中にいる広報課は、どちらからも圧がかかる。
しかも現代はSNS時代。公式発表を待たずに情報が広がり、誤解が定着し、炎上が起きる。だからこそ広報課の判断は、“遅れれば負け”であり、“早すぎれば傷つける”という矛盾を抱えます。
本作の見どころは、そこにいる人々が単なる調整役ではなく、それぞれの正義と責任を背負った当事者として描かれる点です。捜査幹部との折衝、現場刑事との温度差、メディアとの距離感──その全てが、事件解決とは別種の“戦い”として立ち上がります。
福士蒼汰の新境地──静かに熱い“骨太刑事”としての覚醒
主人公・今泉麟太郎は、いわゆる「熱血刑事」でも「天才型」でもありません。むしろ、現場を志しながら広報へ行かされたことに納得できず、役割に迷いながらも、目の前の仕事をやり切ろうとする人物です。
広報課の仕事は、犯人を追うことではなく、事実を“扱う”こと。しかもそこには、人の生活、被害者の尊厳、組織の信頼、社会の空気が絡み合う。今泉はその現実を知り、理想の正義が通用しない場面に何度もぶつかります。
福士蒼汰が魅せるのは、声を荒げる熱さではなく、黙って堪えた末ににじむ熱。説明しすぎず、目線や間で葛藤を見せる演技が作品のトーンと噛み合い、「社会派の主人公」としての説得力を生んでいます。
そして緒形直人との共演が作品の重心を支えます。上司との対話、価値観のぶつかり合い、言葉の裏にある経験と後悔──派手な場面がなくても見入ってしまう“静かな緊張”が、ここで生まれます。
『東京P.D. 警視庁広報2係』まとめ──静かな熱を秘めた社会派エンターテインメント
『東京P.D. 警視庁広報2係』は、派手なアクションで押し切る刑事ドラマではありません。けれど、その代わりに、「情報をどう伝えるか」という現代のど真ん中を撃ち抜いてきます。
原案が“警視庁記者・報道記者の経験者”という強み、広報課という異色の舞台、そしてフジテレビ初となる3つの挑戦(ライターズルーム方式/広報課を舞台にした連ドラ/地上波×配信のシーズン設計)。これらが噛み合うことで、社会派としての説得力とエンタメとしての緊張感が両立した作品になっています。
まだ見ていない人ほど驚くはずです。「刑事ドラマ」だと思って見始めたら、そこにあったのは、警察とメディアの“リアルな境界線”だった──。まずは第1話、先入観を捨てて触れてみてください。
この記事のまとめ
- 『東京P.D. 警視庁広報2係』は“警視庁記者・報道記者経験者が原案”の社会派ドラマ
- 警察とメディアの狭間で揺れる広報課のリアルを主役に据えた異色作
- フジテレビ初の3つの挑戦(ライターズルーム方式/広報課舞台の連ドラ/地上波×配信のシーズン構想)が核
- 福士蒼汰が「静かに熱い」主人公像で新境地を見せる
- 事件解決だけでなく“情報をどう伝えるか”を問う、現代的な警察ドラマ



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